トークショーを終えて思うこと。
先日、下北沢B&Bで行われた『女子の兵法』出版記念トークショー。
おかげさまで無事終了しました。
会場は満員御礼。すごく嬉しかったです。
なんというか、正直な話、これまで小説を書いていても、恋愛に関するアレコレを書いていても、
「果たしてどんな人が読んでいるのやら」
といった思いが常にどこかにありました。
それが今回、初めて「私の本を選んで読んでくれている」人たちにじかに接し、
なんというか、少しばかり見えたものがありました。
ひとことで言うと、私の本を好んで読むような人は「サイレントな気のいい人」なんだろうな、ということです。
つまり、あんまり言上げせず、
根がまじめで普段から人に気を遣うことが多く、
イケイケというよりはむしろ「いや私は...」という感じで、
しかるに自己主張がないわけではなく(むしろ人より強いほう)、
そして、考えすぎな性格のゆえに恋愛において損をすることが多く、
でも、女性としての土俵から降りることもしたくない。
そういう人が、こないだのトークショー会場には多かったんじゃないでしょうか。
いやいや大抵の女はそうだよ、などという声が聞こえてきそうですが、
なんの、この世には生まれつき女としての自分の魅力に疑いを持たない女性もいます。
その一方で、「もういいんです私は」とばかりにサッサと女を捨てる人もいる。
そういう人たちは、どちらもこないだの会場にはいなかった気がします。
私が新刊『女子の兵法』の表紙をピンクでなく赤にしたのはそういうわけで、
たぶん私は、
1.頑張っていて、
2.男にこびず、
3.かつ女の色気を失いたくない
そんな女性が好きなんだと思います。
わけても3が難しく、
というのは、女は1と2を頑張りすぎると、
NYの香りといえば聞こえはいいけどいわゆる「SATC」臭とか、
まだ独身なのに「PTA臭」とか、
「虫コナーズ」なみに男性を撃退するのによく効く匂いがジワリと出てきてしまうからです。
これは自分も20代後半、毎日夜中近くまで残業し、身体壊すまで働いていた時代があるからよく知ってます。
とくに、私がいた職場は女ばかりの空間だったので最悪。時おり来る佐川急便の男性にスタッフが色めき立つようなその職場は、重労働の上、熱があっても休めない大変ヘビーな空間でした。
ですが、最近ヒットした「マッドマックス」や「スター・ウォーズ フォースの覚醒」をみてもわかるように、
世の中、昨今は「腕力ですら男に勝つ強い女性」が主流になってます。
だから、今私がこれを言うのは大逆風なんだと思います。
それこそ、フェミニズムの人の前で言ったら火あぶりになるかもしれません。
ですが、私がそれでも言いたいのは、たったひとつのシンプルなこと。
「そこまで頑張って登りつめたのに、なぜもう一歩高みを目指さないのか?」です。
もう一歩とはつまり、
「女としての熟成」というか「円熟味」みたいなモノを手に入れるってこと。
男に養ってもらってる女性は、当然、心に余裕があります。
だから、さりげない心配りとか、女ならではのフンワリとしたいろいろなことができる。
だってそうです、仕事や生活のためにキリキリ舞いする必要がないんですから。
でもさ、
仕事もちゃんとできる女が、そういうの身につけたら最強だと思いません?
私はこれ、その気になれば必ずできると思うんです。
しかも、そんなに難しくない。心構えひとつでいける。
べつに男に三歩下がってかしずけと言ってるんじゃない。
そうじゃなく、自分の「分」を果たした上で、なおかつ男に思いやりを持ってあげられたら、
そのほうがカッコイイじゃないかってことなんです。
イメージは昔の日本の、凛とした芯の強い女性。
私はあれが最強だと思ってます。
そして、さあここからは思い切り口が悪くなりますが、
私は、
他人の稼ぎで食べているのに、周囲に不満をまき散らすばかりの女性には興味ないし、
自分ではなんの努力もせず、頑張っている人をねたんで呪詛の言葉を吐く女性にも興味ありません。
そして、夫や子供に早々と恵まれ、自分が働く必要がないのはたまたまの幸運にすぎないのに、おのれを「勝ち組」と信じて疑わず、独身キャリア女性を上から目線で見るような女性もノ―サンキューです。
あーあ、とうとう言っちゃった。
でも、つまりはそういうことです。
私はこれまで「本当は専業主婦になりたいんです」とこぼす多くのキャリア女性に会ってきましたが、
オイオイ、本当にそう思ってる? とそのつど疑問に思います。
ていうか、もしそれになれる機会があっても、できればならないほうがいい。
結婚しても子供を持っても、キャリアは手放さないに限ります。
なぜなら、こんな不安定な時代に、専業主婦などというリスキーな選択とてもおすすめできないから。
この件については突っ込むとダダ長くなるのでまたの機会にいたしますが、
ようは、どんな境遇にいるにせよ、イザとなったら自分一人で立てる人間でいるに越したことはないってことです。
とにかく、今の世の中、これほど「幸せ」の定義が細分化してしまっている中、
なにが幸せかなんてことは、その人にしかわからない。
子供を産み育てるのが幸せな人もいるし、嫁がず産まず仕事にまい進するのが向いている人もいる。
どっちが優劣なんてことはない。
人それぞれ、いちばん自分にとって心地よい生きかたを探りあてればいいと思うのです。
だけど、ただひとつだけ言えるのは、
これからの時代、女も絶対、経済力を身につけたほうがいいということ。
これはもう、絶対、です。
よき昭和の時代は終わり、専業主婦の絶対数は減少の一途をたどるのみ。
「稼ぐダンナさん」が特別天然記念物となる日も近くなりました。
でも、その「稼ぐダンナさん」も、病気になったり死んじゃったり、はたまた逃げてしまったらどうするのでしょう。
そういうとき、なすすべもなくオロオロするより、「よし、じゃいっちょやるか」って自分が腕まくりして立ち上がるほうがカッコイイと思うんです。
まあ世の中「一生苦労とは縁のない」ハイソな女性が一部いるのも事実ですが、
そういう女性に関しては、その人が「隣はなにをする人ぞ」という想像力を持たない人である場合、私はなるべくかかわり合いを持たないようにしています。
なぜなら、自分は金持ちの親なり夫なりの庇護下にありながら「アナタたちそんなじゃダメよ」とか上から目線でものを言う人を前にしたら、私はまず間違いなく意地悪な人になってしまう自信があるからです。
彼女たちには独身キャリア女性たちがすべてを犠牲にし、苦労して身につけたスキルの価値が見えてない。
だからひどい人になりますと、自分は上から目線のまま、キャリア女性のスキルだけいただこうと「タダでやってー、お願い♪」などと無邪気に搾取しようとする人もいます。
恥をしのんで言いますが、私も昔、これを無邪気にやってしまったことがありました。
中にはそれでも気前よくやってくれる親切な人もいましたが、これがものすごく恥ずかしいことだとわかったのは、自分自身がフリーでお金をいただく立場になってからです。
だから、今はそのことを反省してるし、人が汗水たらして得たスキルにはきちんとしかるべき対価を払う習慣がつきました。
そう、目には見えなくても、人が苦労して得たスキルや情報には値段がついているんです。
だからそれを提供してもらう場合は、それなりの対価を支払わなければいけない。
で、かつての自分みたいな無邪気にそういうことを要求してくる人を見るたびに「自分で稼いでからものを言え、無理ならせめて金払え」と内心思っていましたが、
最近は、聞かれもしないのに独身女性に上から目線でものを言ったり、安易に独身キャリア女性の市場に参入しようとしてくる「恵まれた無邪気な人たち」が抱える深層心理みたいなものも少しずつわかってきました。
自分でも今のありようにどこか不安があるから、わざわざそういうこと言ってくるんじゃないかと。
だって、昔の自分がそうでしたから。
でも、それだと成長がない。あまりにも幼稚過ぎる。
人のありようをアレコレ言う前に、「今の自分には果たして何が足りていないのか」と考えない限り、決して自分の現状を打破することなんかできません。
そもそも、ひとはみな、自分の立場を基準にしてものを言うようにできてます。
それはもう仕方ないことなんですが、
ならばせめて、
「自分はこれがベストだけど、あの人はあれが一番いいのかも」
くらいには思っていたほうがいいんじゃないか。
今の私は人がどんな選択をしても、それがその人にとってベストであるならオッケーだと思っているし、
まだ自分が知らないところでアレコレ「やっちまってる」ことは見当がつくから、たとえ年下の人に対しても決してドヤ顔なんてできない。
それでも今、いまだ中途半端な自分から個人的な好みを言わせてもらえば、
私はやはり、
1.頑張っていて、
2.男にこびず、
3.かつ色気を失わない、
そんな人が好きだし、応援したいんです。
だから、「私もそういうのがいい!」と思う人には私の書いたものを読んでほしいし、
もし私のありようとか、書くものが少しでも参考になるなら、もうどうぞどんどん持ってってくださいって感じです。
その一方で、もし私とは違う価値観の世界で生きている人がいたら、その人たちには「きっとあなたの方のためにはどこかに別の受け皿が用意されているはず」と言いたいです。
ただ、繰り返し申し上げますが、私は決して自分の個人的な考えを押しつけたくはありません。
なぜなら、私とほかの人では生きてきた歴史も違うし、そのほかのいろいろの縁起も違うと思うからです。
で、
ついこないだ、フェミニズムのど真ん中にいるような独身キャリア女子と飲んでいて、
「あなたがたのような優秀な方たちに私なんぞが提供できるアドバイスなどないのではないか」と率直に申しましたところ、
「いや、それが私らは紅緒さんの話が聞きたいし、いろいろ言われてみたいのだ」と即答されました。
私のなにを見てそう言われたのかわかりませんが、もし事実なら嬉しいことです。
でも、それって難しい。一体なにを言えばいいのでしょう?
正直、彼女たちは優秀な分、とてもデリケートすぎて面倒くさい。
だって、プライドがめっぽう高く、しかもやっかいなことに仕事ができる。
だから、定時に仕事残して「保育園に子供迎えに行くので帰りまーす」という女性が許せないのだろうし、
たとえ許せても、そういう女性をどこか下に見てしまう。
そんなきみらがほしい着地点て一体なんなんだろうかと考えるのです。
すごくすごく考えるわけです。
で、これにはまだ「こうだぜ」という答えは見えてないのですが、
どこかにきっとあると思うのです。
頑張ってる人には頑張ってる人の、正解というやつが。
......長々と書いてしまいましたが、
これがまあ、先日のトークショーでたびたびつっかえ、言い淀んだ末、結局言えなかったことの骨子みたいなものなんです。
長々と読んでくださってありがとうございました。
引き続き頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。