先週 ふと思い立ってひとり知床半島まで行ってきたのですが
今回 なにより収穫だったのはパワースポットの滝でもなく
大自然まるかじりの世界遺産知床五湖でもなく
道端に普通に歩いていて肝を冷やしたヒグマでもなく
帰り際 空港近くのガソリンスタンドで初めてセルフ給油ができたことでした。
思えば免許をとって五年、
じつは自分でガソリン入れたことがなく
レンタカー屋さんに「頼めばやってくれますよ」と言われたので安心していたのが、
人の良さそうなスタンドのおじさんは微笑みを浮かべ「自分でやってね」と言いました。
ただ おじさんはその場を去るでもなく「フタあけて」「静電気切って」と手順を口頭で説明し、
自分では決して手を出すことなく 最後まで私にやり切らせたのでした。
そのときに私が得た達成感といったらハンパなく、
なんだ、やればひとりでできるじゃん、これからはもう自分でできるぞ、と
恥をしのんで言ってしまえば 帰りの飛行機の中でそのことに感動して泣いたのでした。
一事が万事 じつはそのことは私の中のものすごく大きな何かに触れたらしく、
ゆえにその一件が なにも知床でなくても経験できることでありながら旅最大の思い出となったのです。
しかし思えば こんな風にやってみれば簡単にできることを、
我々はいかに思い込みや先入観でやらぬまま過ごしているか。
なまじ魚を自由に食べられる環境にあるゆえに、
釣りの仕方を学ばないまま一生を終える人はきっと多い。
たとえ川の上流から 手を伸ばせば届きそうな大きな桃がドンブラコと流れてきても
「私には手を伸ばす資格はない あれをとるのは私ではなく もっと他の偉い人だ」などと
最初から勝手な思い込みでせっかくのチャンスを逃してしまう。
だけどきっと人間 必要に迫られればなんだってできるはずで、
「はーい」と手を伸ばせば案外 手に入るものっておそらくいっぱいあるのだ。
「フォースの力で持ち上げるものの大きさは関係ない」とあのヨーダさまも言っていたっけ。
ちなみに写真は知床とは全く関係ない 昨日からすごく行きたくてたまらないミコノス島です。
〔佐伯紅緒公式ブログ 2013年7月7日〕