すみません、またこっち更新滞ってます。
坂東眞砂子さんが先月末に亡くなられていたと聞きました。
少なからずショックを受けています。
坂東さんといえば「死国」「山姥」などのホラー小説が有名ですが、私のイチオシはなんといってもこの「旅涯ての地」(角川書店)です。
歴史ものです。 時代は中世イタリア。
マルコ・ポーロに買われた日本人と中国人ハーフの奴隷・夏桂(かけい)という中年男が主人公です。
この夏桂があるとき、キリスト教史をひっくり返しかねないイコンを手に入れてしまい、そのせいでヨーロッパ中から追い回されることになります。
そこを異端とされていたカタリ派(輪廻転生を信じるキリスト教の一派)の宣教師たちに救われ、彼らと共にアルプスの山中に隠れ住むのですが・・・というお話。
誰にも生涯本棚にとどめ置きたい一冊というのがあると思いますが、私にとってはこの本がそうです。
作中に夏桂が恋をするマッダレーナというカタリ派の修道士の女が出てきますが、この彼女がすごく魅力的で、読んだ当時は少なからず影響を受け、修道院入りを考えたほどです。(うそです)
一愛猫家としては、坂東さんの数年前に問題になったあの「子猫殺し云々」の件はいただけませんが、それでもこの小説が素晴らしいことに変わりはありません。
私もいつか、こんな魂の根源に触れるような小説が書きたいと思っています。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
〔佐伯紅緒公式ブログ 2014年2月7日〕